1型糖尿病についての理解を広める活動

発病してみて、この病気で苦しんでいるひとたち、特に子どもたちは、多くの場合夢を追うことを諦めてしまう、ということを知りました。

この病気は、本当に認知度が低いと思います。
「糖尿病」という名前からのイメージで偏見に苦しむ人も多いし、生涯にわたる治療のために経済的な負担も大きくて、患うと、病気と闘うこととただ生きていくことで精一杯になってしまいます。自分自身もなんとか選手として生きることに必死でした。
現役中に中西庸 さんと出会い、自分の人生を書籍にしていただいたことで、わずかでも1型糖尿病の情報を広めるために役立てたことは幸運でした。
今はとにかくこの病気のことを沢山の方に正しく理解していただき、病気と闘っている人たちが少しでも人生を楽しむことができる社会になることを望んでいます。

この思いは引退した今でも僕の全ての活動の原動力となっています。

※書籍に関する情報はこちら
私は23歳の時に、「1型糖尿病」を発症し、戦力外通告を受け、サッカー選手として生きていくことを一度は諦めました。

「もうサッカーを諦めなくてはいけない。」

大人の私ですら、戸惑い、落ち込み、夢諦めてしまう、そんな病気です。
常にインスリンを携帯し、毎日注射する必要があるのです。
そして多くの方の支えもあり、「もう一度サッカー選手としてピッチに立ちたい。」と決意してから、その後10年間プロサッカー選手としてプレーを続けてこれました。
そして、私がこの病気と向き合う中でいちばんの驚きだったのは、この病気と闘っている子どもたちが日本だけでも数万人いるということでした。

「慣れれば平気でしょう。」

決してそんなことはありません。毎日注射を打つことに絶望し、注射を中断した7歳の子どもが亡くなるという事件も起きています。

私はその事件を聞いた時、これまで味わったことがないような、とてつもない悔しさを感じました。「生きることを諦めて欲しくない。」そんな気持ちから、子どもたちに力強く勇気を持って成長してもらいたいと願っています。
そして、「どんな状況でも、夢を諦めて欲しくない!」そんな思いを伝えたいです。
乗り越えられたのは、医療でも薬でもない、
支えてくれた「 人 」と「 夢 」のおかげです。

今はインスリンポンプを使っているのですが、インスリン注射を使用していた時は周りの目が気になるので、隠れて打ったり、トイレで打っていた時期がありました。

精神的に辛かったのですが、乗り越えられたのは、家族、友人、チームメイト、そして現役時代に応援してくださった温かいサポーターの皆様のおかげです。

この病気は、精神的にも相当辛いものです。逆に強い精神力さえあれば、乗り越えられます。そのために必要なのは「人(憧れ)」と「夢」だと思っています。

私自身が大したことをできるわけではないのですが、子どもたちと一緒に夢を見ることはできます。それ応援することもできます。話を聞くこともできます。仲間になることもできます。


「不安の中で生きている。それでも僕たちには 夢 がある。」

どれだけ大変な病気なのか一人でも多くの方に知ってもらいたい、まだまだ知らない人が多い病気です。これは私の願いでもあり、病気で命を落としてしまった人たちの願いでもあると思っています。

病気を防ぐことは大切です。しかし、それ以上に大切なのは、かかった後どう病気と向き合っていくか。

病気になるとより一層健康のありがたみを感じます。当たり前だったことが全部そうではなくなります。
だからこそ、今目の前にある1秒を大切に生きていけると思います。

病気にかかった私たちだからこそ、伝えていけることだと思うのです。
そして最終的に周りの人たちに感謝できるそんな素敵な大人になってくれたらこれ以上嬉しいことはありません。

この活動はこれからも続けていきます。
そして最後に、現役の頃も引退後も、ともに戦った仲間がいることが私の誇りであり、生きている証です。
1型糖尿病とは■

1型糖尿病(IDDM、インスリン依存型糖尿病、小児期に起こることが多いため小児糖尿病とも呼ばれます)は、主に自己免疫によっておこる病気です。
自分の体のリンパ球があやまって内乱を起こし、自分自身のインスリン工場、膵臓のランゲルハンス島B細胞、の大部分を破壊してしまうことで発病します。
生活習慣病でも、先天性の病気でもありませんし、遺伝して同じ家系の中で何人も発病することもまれです。
主に子どもに起こる原因不明の難病であることに加え、治療を厳密に行わないと心臓、腎臓、眼、神経等の病気が発症しますので、患者本人の苦痛はもとより、患者家族にとっての精神的、経済的負担は多大なものとなっています。
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